こけら寿司
お祝い事のときに振る舞うおめでたいハレ食こけら寿司(こけらずし)とは
「こけら寿司」は、すし飯の上に焼いてほぐした魚やしいたけ、人参、卵などをのせ、木枠で押し固めたすしのことで、「押しずし」や「箱ずし」の原型といわれている。すしを押し固める木枠に、屋根をふく「こけら板」を用いたことから「こけら寿司」と呼ばれるようになったという説や、材木を削るときに出る木屑の「こけら」に見た目が似ているために「こけら寿司」と名付けられた、など名前の由来には諸説ある。 上にのせる具は地域によってさまざまである。和歌山市の田ノ浦漁港近辺では、かつて、魚の供養とその年の豊漁を祈願して夏祭りをおこなっていた。このとき、春から夏にかけてとれる「ヒメジ」や「エソ」を使った「こけら寿司」を振る舞う。ヒメジは、三枚におろして塩をしてしばらくおかなければならないため、夏祭りが近づくと前もって準備していた。 和歌山市雑賀崎でつくる「こけら寿司」は、底びき網漁で水揚げされるエソのそぼろを使う。頭と尾、内臓を取り除いて焼き、小骨を丁寧に取り除いてつくる、おもてなし料理の一つだ。身を柔らかくするために包丁でトントンと叩くことから、「トントンずし」とも呼ばれている。 和歌山市松江の「こけら寿司」は、エビやタイのほぐし身とすし飯を幾重にも重ねてつくる。また、エビの代わりに赤魚を使うこともある。 那智勝浦町では、黒豆や川エビ、しいたけ、高野豆腐、人参などの具材を散りばめる。すしの仕切りに、夏祭りの頃はバショウの葉を、秋祭りやお正月は高菜の葉を使う。 固くなったすしは、焼いて食べても一味違った美味しさを味わえる。 和歌山市では、郷土料理教室等の体験イベントを開催し、「こけら寿司」等の郷土料理のつくり方を地域の人々や学生に教えている。
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